神様の憂鬱
「天歌」

名前を呼ぶと、閉じていた瞳がボクに向けられる。

「なんですか?」

歌の歌詞のように問いかけてくる。

その間も、曲が鳴りやむことはない。

バックミュージックのように、ボクの言葉を導いてくれる。

でも――

これからボクが言うのは、気持のいいことではなかった。

「紗良奈は――死にたいらしいんだ」

告げると、天歌の指が止まる。

それと同時に、音も消えうせた。

「そうですか」

天歌が悲しそうに呟く。

ピン、と指が弦を鳴らす。

その音もさっきまでとは違う。

音に感情があるならば、ひどく悲しい音だ。

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