神様の憂鬱
そろそろと思い薬缶を持った。

けど、つるっと滑って落としてしまう。

あっ、と思ったときには床中水だらけ。

おまけに、白い湯気がもわもわと漂っていた。

あーあ、また怒られちゃうよ。

早く隠さなくちゃ――

と思ったときにはすでに遅かったようだ。

音を聞きつけて扉が開く。

「すごい音したけど、なにしてるの?」

あわてて紗良奈が出てくる。

「なんでもない」

笑顔を浮かべながら誤魔化してみるが、ダメみたい。

顔色を変えた紗良奈が、近寄ってくるなりボクの腕を掴む。

「痛いって」

「ちょっと、早く冷やさないと」

焦ったように蛇口を捻り、冷水にボクの腕をつけた。

よくよく見れば、お湯をかぶってびしょ濡れだったボク。

ま、熱湯がかかったぐらいでどうにかなるボクではないのだけど。

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