神様の憂鬱

紗良奈の仕事

「ちょっとおとなしくしていてね」

そう言われてから、時計の長い針が、二回同じ場所を通過した。

ボクはソファーの上で膝を抱えて座り、じっと彼女と時計の針を交互に見比べていた。

テーブルの上には、さっきから紗良奈がかかりっきりになっているもの。

そして白と黒のコーヒーカップがある。

もう湯気は出ていない。

冷たくなっている。

というよりもボクのほうの中身は空っぽ。

本当は新しいのが欲しいのだけど、ボクは偉いから我慢している。

邪魔せず、彼女が気づいてくれるのを待っている。

なんとも健気だね、ボクは。

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