神様の憂鬱
で、紗良奈がなにに対してそんなにも集中しているのかというと、一枚の紙。

最初は真っ白でなにも描かれていなかったけど、

今では数秒ごとに線や色が増えていく。

シュッシュ、っていう音や、キュッキュっていう音を鳴らしては紗良奈が息をつく。

さっきちょっとだけ話しかけてくれたときに聞いたのだけど、

どうやらこれが彼女の仕事らしい。

いろんな絵を描いて、お金をもらうみたい。

なんか大変そう、見ているとね。

「ふぅ」

と紗良奈が大きめの息をついた。

「終わったの?」

握り締めていたペンを置いたので訊いてみる。

「うん、今日はこれでお終い。続きは明日ね」

珍しく笑顔を浮かべ、そう返してくる。

なんだかさっきから機嫌がいいみたい。

やっぱ、ボクのコーヒー作戦が効いたのかもね。

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