神様の憂鬱

ごめんなさい?

カーテンの隙間から、月明かりが漏れている。

その光は紗良奈の横顔を照らしつつ、ボクの足元まで伸びていた。

紗良奈は――

今日もベッドの上に座り、泣いている。

あの日から毎日こうだ。

ボクが勝手に部屋に入ると烈火のごとく怒るくせに、今は視線すらもよこさない。

一言も口を利かない。

ただ、おぼろげな目から水をこぼしている。

「紗良奈」

呼びかけて近づいてみるが、彼女の耳には届いていないようだ。

ベッド端に膝を乗せた。

ギシっときしんだ音がするが、彼女は一向に気にしない。

なにもない虚空(こくう)、もしくは真っ白な壁に眼差しを飛ばしている。

ポタリ、と頬を伝っていた雫が宙に解き放たれた。

引力にしたがって落ちていく。

布団の上には無数のしみがあった。

どれもこれも、彼女の身体から流れ出てきたものだ。

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