神様の憂鬱
「おや、違いますか。では、天歌の思い違いですね。すみませぬ」

悪びれた様子もなく、彼女は謝罪の言葉を述べる。

ただ、天歌はしたり顔で小さく頷いた。

そんなわけないよ。

ボクは声に出さずに呟いた。

神の中の神たるボクが、人間ごときを愛するわけなんてない。

その自信があったから。

「また独り言?」

いつのまにか、目の前には紗良奈がいた。

小首をかしげて、ボクを見ている。

ボクはこの娘を愛しているのだろうか?

否、そんなはずはない。

情が移っただけのこと。

そうだ、そうに違いない。

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