神様の憂鬱
「ごめんなさい」

紗良奈が小さな声で呟きだす。

途切れ途切れに、謝罪の言葉を漏らす。

このまま眠らせてしまうか――

そう思いかけて、

「紗良奈」

と声をかけた。

反応はない。

わかってはいる。

何度も試してきたのだから。

ただ、ひとつだけ試していないこともあった。

ボクはそれを呟きにのせる。

「サナ――」と。

その瞬間、ゆっくりと紗良奈がボクを見た。

ひどく息苦しそうに顔をゆがめる。

そして、両手で顔を覆い、火がついたように泣きはじめた。

「ごめんなさい」

という呟きは、もう聴こえない。

そのかわりに、泣き声だけが大きく響いた。

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