神様の憂鬱
「紗良奈」

手を伸ばして触れようとするが、まるで見えているかのように振り払われた。

長い黒髪をなびかせるように、いやいやと身体を揺らす。

――失敗したか――

心の中で舌打ちしながら、彼女の行動を眺めた。

覆われた手の甲から、手首、腕へと涙が流れていく。

いったいあの手の内側には、どれだけの悲しみがあるのだろう。

閉ざされたあの空間に、答えはあるはずなのに――

ボクは、これ以上紗良奈を見ているのが辛くて――

眠らせた。

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