神様の憂鬱
考えているうちに、紗良奈が目を開けた。

ちょうど視線の先にいるボクは、望みどおり視界に収まる。

「おはよう」

と紗良奈が言った。

「おはよ」

とボクも返す。

そのまましばらく見つめあっていた。

そして――

「コーヒー、淹れてくれる?」

紗良奈が言った。

「いいの?」

「そのかわり」

こぼさないでね。

薄く微笑んでそう続ける。

「わかった。こぼさない」

呟いて立ち上がる。

ドアを開けて振り返ると、瞼をこする彼女がいた。

でも――

どうして紗良奈は怒らなかったんだろう。

カップに粉を入れながら疑問に思った。

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