神様の憂鬱
彼女はまだ、部屋から出てこない。

たぶん、着替えているんだと思う。

洋服のこすれる音が、微かに聴こえてくるから。

それにしても――

不思議だ。

もしかして、ボクに心を開いてくれたってこと?

だから怒らなかったのだろうか?

そうなのかもしれない。

そうじゃないのかもしれない。

なんなのだろう。

「どう? 大丈夫?」

ドアを開けて、紗良奈が訊いてきた。

ボクは止まっていた手を動かして、薬缶の中のお湯をカップに注ぐ。

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