神様の憂鬱
「これって――」

紗良奈が沈黙を破る。

「コーヒーの素、どのくらい入れたの?」

「適当に」

「適当って?」

眉をしかめて訊いてくる。

「わかんない。コップのここら辺まで」

指で白いカップの側面をなぞった。

「はぁー」

と紗良奈がため息をついた。

「ダメだった? まずい?」 

訊ねると、苦笑交じりに首を振る。

「入れすぎね、普通はその半分くらいでいいの。あなたも苦いでしょ?」

「ボクは平気だけど」

「そう? でもわたしには苦すぎるわ。今度からは、もう少し減らしてね」

「うん、ごめん」

「いいの。誰かが淹れてくれたコーヒーを飲むのなんて久しぶりのことだし」

目を細めて、窓の外を見た。

今日も、弁財天のところに行くのだろう。

なにを願っているのかはわからないけれど。

そう思いながら、紗良奈の視線の先にある天歌のことを思い出した。

そして、天歌との賭けのことも――。


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