神様の憂鬱
「大黒は、まだ帰ってこないのかい?」

「ええ、まだでございますわ」

天歌が、隣に腰を下ろして答える。

確かにボクとの会話は成立しているけれど、目は紗良奈をむいたまま。

よっぽど彼女のことが心配なのだろう。

かくいうボクも、紗良奈をずっと見続けている。

だから紗良奈は、神様2人の視線をあびて、

誰もいない社にお祈りを捧げているわけ。

「それで、首尾はいかがでございますか?」

「首尾――ねぇ」

苦笑交じりに呟いた。

「なんかもう、わかんないよー、って感じ」

「そうでございますか」

天歌がくすくすと笑う。

「笑い事じゃないんだけどね」

顔をしかめて呟くと、

「すみませぬ」

たいして悪びれた様子もなく、天歌が言った。

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