神様の憂鬱
「本人のことは本人に聞くのが一番ですわ」

そう言って、にっこりと微笑んだ。

「ほら、こちらに来ますわよ」

歩いてくる紗良奈を愛しげに見つめ、天歌が言った。

「じゃ、聞いてみようかなぁ」

ぽつりと呟くと、

「そうしたほうがいいですわ」

天歌は、それを最後に姿を消した。

入れ替わりに紗良奈が同じ場所に腰掛ける。

ついさっきまで天歌が座っていた場所に。

「いつもいつも、誰とお話しているの?」

薄く微笑んで紗良奈が訊いてきた。

「うん、ちょっとね」

答えると、

「そう」

と呟いて歩き出した。

ボクも天歌に向けて軽く手をあげ、そのあとに続く。

頭の中には、

「本人に聞くのが一番ですよ」

と言った天歌の言葉が何度も繰り返されていた。

帰ったら、聞いてみるか――


< 154 / 200 >

この作品をシェア

pagetop