神様の憂鬱
「サナ」

と再び呼んでみる。

返事はない。

うつろな眼差しだけが、ボクに向けられている。

どうやら、ボクはまた失敗してしまったようだ。

固まったままの彼女に近づき、そっと手を伸ばす。

見えているはずなのに、彼女は一ミリも動かない。

頬に張り付いた雫を指先で取り払う。

そして――

ボクは手のひらで彼女の瞼を閉じた。

そうするより他に、ボクにできることが見つからないから。

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