神様の憂鬱
天歌が自分の社の前に祈りに来ている女を、愛しそうに眺めている。

「恋愛成就ねぇ」

呟くと、天歌がちらっとボクを見た。

力を使ったボクには、相手の男の顔まで見えてくる。

その男のそばによりそう女のことさえも。

「で、どうすんの?」

「なにがでございますか?」

「今の女だよ。願い事、叶えてあげるの?」

天歌が曖昧な笑顔を作り、ほうっと息を漏らした。

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