神様の憂鬱
「離してください!」

紗良奈が大声をあげて身をよじる。

けれど、男の手はそんなことでは離れないようだ。

いやらしい笑みを浮かべて、ますます力を込めている。

ボクは、空から冷静にその光景を見つめていた。

「なんだよ。暇なんだろ? こんな時間に一人で歩いているくらいだし。

俺らと遊んでくれたっていいじゃねーかよ」

もう一人の男が、紗良奈の反対側の腕を掴んだ。

二人に引きずられるような形で、紗良奈はどんどんと路地裏に連れて行かれる。

数人の人間がそれを見ているが、助けようとする者はいないようだ。

所詮、そんな程度の生き物か。

吐き捨てるように呟いて、姿を現すと同時に男達の前に立ちふさがった。

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