神様の憂鬱
「あのさぁ」

呟くと、男が足をとめてボクを見た。

『なんだよ、うぜぇなぁ』

思念どころか、顔中でそれを表している。

ボクはそのコエを頭の中で聞きながら、

「紗良奈、返してくれる?」

言って、彼女の方に手を伸ばした。

「おっと」

と言いながら、片方の男が間に割り込んできた。

「おまえ、神様なんだろ? 

だったら人間の女のことなんてほっといてどっか行けよ」

下品な笑顔を浮かべ、馬鹿にしたように男が言った。

「気にいってるんだよ、返してくれ」

「わかんねー奴だな、おまえも」

男がため息混じりに拳を振り上げる。

わかんないのは――

「君でしょ?」

笑顔を浮かべ、男に手をかざした。

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