神様の憂鬱
彼女はその手を見つめ、

「手品? そうでしょ、わたしを騙してるんでしょ?」

「手品? なにそれ?」

彼女が真っ直ぐに視線を飛ばしてきた。

「ほんとなの?」

「なにが?」

「本当にあなた、神様なの?」

「そうだよ。ずっと言ってるじゃん」

ボクは大きく息をつき、

「やっと信じてもらえたみたいだね」

と呟いた。

彼女はまだ、訝(いぶか)しげな目でボクを見ている。

「殺したの?」

「ああ――」

「そんな」

彼女が言葉の途中で大きな声を出す。

どうやら、勘違いしているようだ。

「ちょっと待って。殺してなんかないよ。遠くに飛ばしただけ」

「ほんと?」

「ん、今頃、どっかで自分の神秘体験をかみ締めているんじゃない」

「そう」

彼女の口から吐息が漏れる。

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