神様の憂鬱
その瞳を閉じ、数秒考えてから口を開いた。

「けれど、人間だって全てがそのような者ではありませぬ。

中には、自然を愛する者だっております。

争いを好まず、平穏に暮らしている者だってたくさんいるのです。

あなた様は、その者たちもまきぞえにして、全てを無に返すというのでございますか?」

それはね、とボクは言った。

「夢だよ」と。

「天歌、きみが言っているのは理想だよ。

確かに、中には良い人間もいるのかもしれない。

ボクが見守っていきたくなるような、この愛を傾けたくなるような人間も少なからずいるのかも。

だけど、だけどね、この長い間ボクはそんな者とは会えていない。

見つけられなかったんだ」

「それは――」

彼女が口を挟もうとするのを片手で制し、ボクは言葉を続ける。

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