神様の憂鬱
キッチンに立つ紗良奈のうしろ姿が見える。

興奮してまくしたてる彼女を、「逃げないから」と約束して、

なんとか家まで連れてきたのが5分ほど前。

「コーヒーが飲みたい」

と言ったボクの願いを叶えるために、今はお湯を沸かして準備している。

「そんなに何度も確認しなくても、消えたりしないから」

安心させるように声をかけるけれど、不安そうに彼女が振り返る。

そんな彼女をかわいいなぁ、と思いながらソファーの上から見つめていた。

それが今の現状。

いそいそとやってきた彼女が、テーブルの上に二つのカップを置いた。

ボクはその片方に手を伸ばし、ごくごくと飲んだ。

やっぱり苦くて変な味。

でも、これが癖になる。

紗良奈がじっとボクを見つめていた。

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