神様の憂鬱
「あの、神様?」

紗良奈が、小さな声でボクを呼んだ。

「ん、なに?」

「コーヒー、新しいものと取り替えましょうか?」

ボクの目の前に置かれた、湯気の消えてしまったカップを見つめ聞いてくる。

「あ、待って。飲んじゃう」

一息に喉に流し込み、心の中で苦い、と呟いた。

紗良奈が、いそいそと新しいコーヒーを淹れるためにキッチンに行く。

コンロの上の薬缶を火にかけながら、時折、心配そうに振り返る。

大丈夫、いなくなったりしないから。

何度も繰り返しそう伝えているのだけど、心のどこかでは疑っているのかもしれない。

確実に安心はしていないだろう。

チラチラと遠慮がちな視線を受け流し、

「紗良奈」

と呟いた。
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