神様の憂鬱
「なんですか?」

「一応、聞いておくね。

もし、もしだよ、その男が見つかったら、きみはどうするの? 

どうしたいの?」

まだ見つかってはいない。

それを強調するように、もしという単語を繰り返す。

「彼が見つかったら――わたしがシアワセニします」

虚ろな眼差しで、紗良奈が呟く。

「じゃあ、もし、男が今、幸せだとしたら? 

きみにしてもらうまでもなく、自分で幸せを手に入れていたら?」

「自分で――? 幸せを――?」

理解できない、という感じに首がゆっくりと傾いていく。

そして――

「彼は、わたしが幸せにするんです。じゃないと、そうじゃないと――」

「あー、もういい。わかった、わかったから」

大きく身体の前で両手を振り、それ以上の彼女の言葉を打ち消した。

その先の言葉は、頭の中に浮かぶだけで十分だ。

彼女の口から、声からは聞きたくない。

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