神様の憂鬱
「彼はそこにいるよ。もうこれできみの願いは叶えたはずだ」

彼女が、大きく頭を振った。

「まだ――まだです。わたしは、彼を幸せにしないと」

「彼を、幸せに?」

一語一語小さく区切り、聞いてみた。

「どうやって?」

訊ねるボクをきっと睨み、

「あの人の隣にいるのはわたしなんです。

わたしがあの人を幸せにしないといけないんです。

じゃないと――許されない。

わたしは一生許されないんです」

ボクの腕を引きちぎるように振り切り、数歩前に出る。

もう、ボクには彼女を止める気はなくなっていた。

彼女の好きなようにさせてやるつもりだった。

これ以上、こんな状態の紗良奈を見ているのが辛くて、

使っていたチカラをといて彼女の姿を現し、この場を去ろうとした。

あとは――

紗良奈の悲しみが長く続かないように、この世界を少しでも早く終わらせようと、

そう思っていた。

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