神様の憂鬱
「楽しみだなぁ、早く誕生日にならないかなぁ」

まだその場の空気をよむことなんて知らない子供は、

どんどんと想像の世界へ入り込んでいく。

男がそんな子供を見つめ、意を決したように言った。

「ダメなんだ。パパ、その日、大事な仕事が入っちゃって、行けなくなった。ごめん」

両手をパンと顔の前で打ち鳴らして合わせ、拝むように子供を見つめた。

やっと理解したのだろう。

みるみるうちに、子供の顔が歪んでいく。

そして、大量の涙がこぼれだした。

「ヤダ! ヤダよ。ずるいよパパ! 約束したじゃんか!」

大きな声で叫びながら、男の胸を小さな拳が叩いた。

「ごめん、ごめんな」

困ったように微笑みながら、男が謝り続ける。

けれど、子供は一向に泣き止まない。

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