神様の憂鬱
「貴史、本当にパパのこと嫌いなの?」

子供が、しゃくりあげながら頷いた。

「パパのこといらないの? もう、許してあげないの?」

また、小さく頷いた。

男が子供に触れようとしたけれど、小さな手がそれを降り払った。

すると、その小さな手を女が捕まえて、ぐいっとひっぱった。

女が子供の耳元でナニカを囁いた。

嫌がって暴れようとした子供が、次第におとなしくなる。

そして――

子供が小さく頷いた。

ゆっくりと男の方に向き直り、頬に涙を貼り付けたままで、にっこりと笑った。

「いいよ。ぼく、パパのこと許してあげる。

だって、ぼくはパパのことが大好きだから。だから許してあげるんだ。

パパ、ごめんね、ってゆったもん」

男の顔に、安堵の表情が浮かんだ。

子供の頭を手のひらでグリグリと撫で回しながら、

「ごめんな」と「ありがとう」を続けて言った。

最後に、「パパも、貴史のことが大好きだぞ」と付け足して。


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