神様の憂鬱

男の憂鬱

「こんなことになるのなら、もっと優しくしてやればよかった。

もしあの時に戻れるなら、上手くいかせる自信はあるのに」

そんな呟きが聴こえ、ボクはソコにおりた。

意識して実体を現し、男の前に立つ。

最初、男はひどく驚いたが、ボクの正体を知ると一心不乱に自分の願いを伝えた。

もう一度だけ、やり直しがしたいと――

「俺は、あいつに優しくしてやれなかった。優しくしようとも思わなかった。

そのせいでいっぱい辛い思いをさせて、別れを選ばせてしまった。

別れてしまった今だからわかるんだ。俺にはあいつがいないとダメだって。

だから、今度はちゃんと優しくする。

きちんとあいつのことを考えて、いい彼氏になるんだ。

そして幸せに暮らしたい。だから――」

男は、熱心にボクに語りかけてきた。

だから、ボクは時間を戻してやった。

この男が、求める女と出会う時まで。

< 2 / 200 >

この作品をシェア

pagetop