神様の憂鬱
『もう一度だけ』

先程の男の言葉を思い出してしまい、ひどく気に障(さわ)った。

けれど、それを言う目の前の声は不快なものではない。

だから意識を切り替えた。

天歌は真剣な眼差しで訴えかけてくる。

本当はその願いを聞き届けてやりたい自分もいた。

ほかならぬ彼女の願いだ。

先程の人間の頼みとは訳が違う。

ただ――疲れてしまったんだよ、ボクは。

嫌になってしまったんだ。

この世界が――ボクタチが長い間守り続けていた世界が壊されてしまうのを見ているのが。

長い間見守り続け、導いてきた人間たちが変わっていくのを見ているのが。

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