神様の憂鬱
「それで?」

ボクは言った。

彼女は、思い出したように言葉を続ける。

「どうやら、あたくしにはあの者を救うことができないのです」

「きみに?」

「ええ」

天歌は目を細め、一度頷いた。

力を使って人間の女を覗いてはいないので、何を祈っているのかはわからない。

でも、この弁才天にそう言わせるのだから、よっぽどの祈りなのかもしれない。

「だから、ですね」

彼女が言った。

「あなた様に、そのお力で何とかしていただきたいのです」

「なんでボクが? 

一人の人間のために何かをしてやらなきゃいけないんだい?」

不満を表すように、ふん、と鼻を鳴らす。

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