神様の憂鬱

初戦

しばらくして――

目の前の黒髪が揺れた。

そして、ゆっくりと娘が振り返る。

彼女はボクに気がつくと小さくお辞儀をし、その場所を譲(ゆず)った。

「すみません、どうぞ」

小さな声で呟き、横を通り過ぎようとする。

ただ、ボクはその場所を待っていたわけではない。

他ならぬ君を待っていたのだからね。

「ちょっと待って」

声をかけると、彼女が立ち止まった。

「なにか?」

と呟き、ボクを見る。

その瞳は、虚ろなものだった。

今まで見てきた人間たちとはドコカ違う。

楽しみや喜びが見出せない。

生命力のようなものが欠如(けつじょ)しているような――

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