神様の憂鬱
「なぁ、頼むよ。もう一度だけでいいんだ!」

男は、今にもボクの足にしがみつこうと手を伸ばしてくる。

けれど、見えない壁のようなものが邪魔して、触れることはできない。

当たり前だよ。

いっかいの人間風情が触れてもいい存在ではないのだよ、ボクは。

「きみ、さぁ――」

ボクは、重い口を開いて話しかけた。

男が期待の眼差しで僕を見つめる。

ただ、悪いけどきみの望みを叶えるつもりはないんだけどね。

「つまんないよ」

一言呟くと、男の顔色が変わった。

もしかして、自分の都合のいい言葉だけを待っていたのだろうか?

一瞬にして、表情に怒りがあらわになる。

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