神様の憂鬱
「わたしが行ったら、逃げない?」

「大丈夫だよ、おいで」

微笑みながら告げるボク。

なんておやさしーのでしょう。

たかが人間一人のために、ここまでしてあげている。

紗良奈は、少しずつ、少しずつ足を動かし、ボクの隣まで来て立ち止まる。

そして足元で飛び跳ねる小鳥たちを、目を細めて眺めている。

「なにか餌でもあげているの?」

「んーん、別に」

「じゃあ、どうしてこんなにも集まってくるわけ?」

「さぁ? ボクのことが好きなんじゃない?」

『好きです』

『あなた様が好きです』

鳥たちが、こぞって囁きはじめる。

それは、少しうるさいくらい。

「もういいよ。行きな」

ボクが告げると、鳥たちがいっせいに羽ばたいていく。

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