神様の憂鬱
「家には帰らないの?」

「帰らないよ。そんなもの、ないしね」

むしろこの世界の全ての場所が、ボクの家と呼べるのかもしれないけど。

「ないって、家が? じゃあ、あなたどこで暮らしているの?」

「どこって――」

きょろきょろと周りを見渡し、

「ここ、あとはあそこ」

社の中と屋根の上を指差した。

「ダメじゃない。勝手に中に入ったりしちゃ」

彼女は困ったように顔をしかめる。

「ダメじゃないよ。ボクはいいんだ、入っても」

「そうなの? 国から許可でも貰っているの?」

「国? そんなところからは貰っていないけど?」

はぁー、と彼女は大きなため息をつく。

そして、ふるふると首を振った。

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