神様の憂鬱
「そうそう、最初からそうすればいいんだよ、天歌」

呟くと、

「なにか言った?」

彼女が怪訝そうに聞いてきた。

「んーん、なんでもない。

ほらっ、きみは早く聞いてみるといいよ。弁財天様にね」

紗良奈の背中を押し、社の前に連れて行く。

彼女はやはり苦笑を顔に貼り付けながら足を進め、

一応は瞳を閉じた。

そして数秒後――

信じられないような顔をしてボクを見た。

「なんだって?」

最高の微笑を添えたままでボクは聞いてやる。

ほんとうは聴こえたんだけどね、天歌の言葉も。

「ちょっと待って」

彼女は焦ったように呟いて、また瞳を閉じた。

小さな口は、小声でなにやら言葉を紡ぐ。

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