神様の憂鬱
「あなた、コーヒー知らないの? もしかして」

彼女が、驚いたように呟いた。

「んー、知らないよ。これって、おいしーの?」

「わたしは――好きだけど。人それぞれじゃないかしら?」

「ふーん、じゃ、ボクも欲しい」

「いいの? コーヒーで。紅茶もあるけど? あと、お茶とか」

「いい。コーヒーがいい。飲んでみたいんだ」

なんだかわくわくしてきたぞ。

人間の作り出した飲み物を飲むなんて、どれくらいぶりだろう。

昔はよく、お供え物の日本酒なんかを飲んだりしたけどな。

「ミルクとお砂糖は?」

聞かれたので、「紗良奈と一緒でいい」と答える。

「わたしは、ブラックだけど」

「じゃ、ボクもブラックで」

「苦いわよ?」

「んー、平気」

後ろに立って、湯気の出る熱湯が注がれるのを眺めていた。

なんだか、変な匂いのする飲み物だ。

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