神様の憂鬱
「どうかしたの?」

ペタペタと床の上を歩くと、紗良奈が少しだけ顔を上げた。

「髪の毛から、水が垂れてるわよ。ちゃんと拭いて」

「んー、いいよ。平気だから」

「平気って――いいわ。こっちにきて」

自分の足元を指差して、ボクを座らせるとタオルを奪いゴシゴシと乱暴に拭く。

「紗良奈ー」

「なによ」

「痛いんだけど?」

「我慢して、神様なんでしょ」

「神様なら、我慢しなくちゃいけないの?」

「そうよ。神様なら、このくらい平気なの」

そっか。

ボクは心の中だけで呟いて、ぎゅっと目を閉じた。

神様のボクは、どうやら我慢するしかなさそうだ。

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