神様の憂鬱
「はい、いいわよ」

彼女の呟きと共に解放されたボクは、残しておいたコーヒーを探す。

けれど、テーブルの上にはカップさえ見当たらない。

「ボクの、コーヒーは?」

「ああ、洗っちゃったけど。まだ飲むの?」

「飲むよ。わざと残しておいたのに」

「だって、冷めたらまずいじゃない」

「いいの! 飲みたかったの!」

「わかったわよ!」

彼女が怒鳴って立ち上がる。

「もう一度、いれればいいんでしょ? ちょっと待ってて」

「作ってくれるの?」

「ええ、作りますとも。うるさくてたまらないわ。子供じゃあるまいし」

ぶつぶつとぼやきながらも、彼女がお湯をわかす。

ボクはそれをそばで眺めながら、

「ありがとう」

と言った。

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