神様の憂鬱
「紗良奈はやさしいね」

カシャン、とカップが音を鳴らした。

それを持つ紗良奈の手が微かに震えている。

「やさしくなんてない」

搾り出すような声で言った。

「やさしくなんてないわよ、わたしは」

「紗良奈?」

俯く表情を覗き込むと、ふっと顔をそらされた。

けれど、一瞬だけ見えたものがある。

あの時と同じだ――

弁財天の社の前で泣き出した時と同じ。

何も写さない虚ろな瞳。

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