♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
礼士の呼びかけによって現実に戻された春子は、奇術同好会の室内に置かれてあるパイプいすに座り、

「そうね。」

と一言、つぶやいた。

「しかし、悪人の手助けを喜んで買って出るなんて、なんて奴だろう。

しかも、見てよハルちゃん!ヴァンパイアが挑戦状作るのに使用したパソコンって、このパソコンだよ?

つまり、僕が居眠りしている間にこの室内に忍び込んで、眠りこけてる僕のすぐ側で、僕のパソコンいじってたってんだから、悔しいったら、ありゃしない。

大胆不敵にも、程がある!

一体、どこのどいつだろう!

僕は案外、僕達の身近な人物が犯人だとにらんでるんだが。

鈴木?いや、アイツにそんな度胸は無いし。

では、山下…」

-先輩、あなた自身なんですけれど?-

苦笑しながら、春子は心の中でつぶやいた。

悪の心を感じ取った時、悪に味方したがるヴァンパイア礼士が現れる…

春子は今まで、何度もその真実を伝えたいと思ってきた。

しかし、それはヴァンパイア礼士に脅されていた為、礼士に伝える事が出来なかった。

-…もし伝えたら、俺様の意識が礼士の意識を飲み込んじまって、俺様がこの体の主人になっちまうぜ。

これだけは、意地悪で言ってるんじゃ無い。

…俺様の正体が、礼士の本当になりたい自分自身だからだ。

勿論、アイツ自身で気付いちまってもアウトだから精々、気を使ってやるんだな?-

「…ふうっ。所で礼士先輩。

トマトジュース、飲みます?」

春子は、床に転がっていたトマトジュースを拾い上げ、礼士にすすめようとしたが、

「ハルちゃん、僕がトマト嫌いな事ぐらい知ってるだろ?」

と言われ、春子もまた、その返答に特別な反応をする訳でもなく、

「そうですよね~。」

と言いながら、そのトマトジュースのふたを開け、一気にぐいっとやった。

-いつも健康に気を使っていただいて、ありがとうございます、ヴァンパイア礼士様。

たまには、あなたが飲んで下さいね(-_-#)-
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