♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「…静はその時丁度、入院していたからよ。
ストレス性の胃腸炎、そして、利き手である右手の謎の痙攣の治療で…」
「右手の痙攣…
あっ、そうか!」
「礼士先輩、どうしたんですか?」
「いや、あの時…ほら、僕が筆を静さんに飛ばしてしまった時、右手を激しく震わせていたから、すごく怒っているんだと思っていたけれど。
実際、あの震えは右手の調子が悪いせいでもあったんだなあって。」
「ふうん、そうだったんだ。
…って、あれ?じゃああの人、そんな状態であんなにすごい絵を描いていたの?」
「そ、そうだよ、ハルちゃん!
利き手がベストコンディションでない状態で、あれだけの絵が描けるのなら、利き手の調子が良い時ならどれだけ…」
二人は、静が春子に見せつけた、静の絵の事を思い出していた。
-素人の目から見ても、そのすごさが解る。
写実的だけの絵なら、幾らでも描ける人はいる。
もちろん、写実的に描けると言うだけでもすごい事だが、小谷静の絵は、その次元を越えていた。
木の枝にとどまる紅葉、散る紅葉。静と動。
しかし、枝に未だとどまり、散らずにすんでいる紅葉には、静の状態にある中にも、一寸先の散る運命に抗う動の感情が感じられ、散りゆく紅葉には、動の状態の中に、その運命に耐える事からの開放感、つまり一生を終えた紅葉の葉の、心静かになっていく様が感じ取れる。
そして、その絵の中央に描かれた、小谷静の自画像の微笑からは、嬉しさと悲しさが、共存し合うかのような印象を受ける。
それは、静と動、その移り変わりの激しい一生を、精一杯駆け抜けた事を、見る人に伝える術が無い、紅葉の感情を代弁するかの様。
決して写実的では終わらない、観る者の心に、紅葉と言う一個体、一個体の存在をリアルに浮かび上がらせる作品。-
「そんな天才を、私が潰してしまったの。
あの時、もっと強く言えてたら…」
「あの時?」
ストレス性の胃腸炎、そして、利き手である右手の謎の痙攣の治療で…」
「右手の痙攣…
あっ、そうか!」
「礼士先輩、どうしたんですか?」
「いや、あの時…ほら、僕が筆を静さんに飛ばしてしまった時、右手を激しく震わせていたから、すごく怒っているんだと思っていたけれど。
実際、あの震えは右手の調子が悪いせいでもあったんだなあって。」
「ふうん、そうだったんだ。
…って、あれ?じゃああの人、そんな状態であんなにすごい絵を描いていたの?」
「そ、そうだよ、ハルちゃん!
利き手がベストコンディションでない状態で、あれだけの絵が描けるのなら、利き手の調子が良い時ならどれだけ…」
二人は、静が春子に見せつけた、静の絵の事を思い出していた。
-素人の目から見ても、そのすごさが解る。
写実的だけの絵なら、幾らでも描ける人はいる。
もちろん、写実的に描けると言うだけでもすごい事だが、小谷静の絵は、その次元を越えていた。
木の枝にとどまる紅葉、散る紅葉。静と動。
しかし、枝に未だとどまり、散らずにすんでいる紅葉には、静の状態にある中にも、一寸先の散る運命に抗う動の感情が感じられ、散りゆく紅葉には、動の状態の中に、その運命に耐える事からの開放感、つまり一生を終えた紅葉の葉の、心静かになっていく様が感じ取れる。
そして、その絵の中央に描かれた、小谷静の自画像の微笑からは、嬉しさと悲しさが、共存し合うかのような印象を受ける。
それは、静と動、その移り変わりの激しい一生を、精一杯駆け抜けた事を、見る人に伝える術が無い、紅葉の感情を代弁するかの様。
決して写実的では終わらない、観る者の心に、紅葉と言う一個体、一個体の存在をリアルに浮かび上がらせる作品。-
「そんな天才を、私が潰してしまったの。
あの時、もっと強く言えてたら…」
「あの時?」