♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「もうすでに、卒業していなくなってしまっているけれど、この広報誌の美術部部門を編集したメンバーの一人の生徒が、今回の全高展の記事を扱うに当たって臨時で途中参加した人だった。

ただ、私達にとって不幸な事に、非常に面倒くさがりな人だった…」

-小谷静さんの記事が無い?

ああ、あの記事、扱うの忘れてたんだよね、ゴメンナサイね?




…えっ、今から作り替えてくれって?

無理無理!

…それに、載せられて無くったって当然じゃあ無いですか。

今回彼女、途中で病気でリタイアしてたし。

僕としても、取材時にあなたとしか絡みが無かった分、彼女の事まで気がいかなかったんだ。

僕達としても、広報誌の締め切りが迫ってましたから。

まあ、今更広報誌を作り替える事なんて出来ませんので、彼女が継続して活躍していれば、次の広報誌には載るかと思います。-

「…でも、次の広報誌も、その次の広報誌も、静が私と掲載される事は無かった。

…順調に、次々と出展した絵画は入賞していったと言うのに。」

「…その頃には、もうすでに、静さんは退部していたから、ですか?」

「…ええ。あの子は、それに耐える事が出来ずに、美術部から去って行ってしまった。

…愛用していた果物ナイフと、私に対する憎しみだけを置き去りにして。」

「…気持ちは解らなくはないけれど、それなら次で挽回すれば言い話じゃない。

元々、才能があるんだし、そんな事ぐらいですねるなんて、ガキみたい…」

「そ、そんな事ぐらい!?」

「えっ?」

「…」

春子は一瞬、自分を見つめる恵の表情が急変した事にポカンとしてしまったが、直ぐに自分の言った言葉が恵の感情を逆なでした事に気付き謝ろうとした。

だがもう、間に合わなかった。
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