♀乙女座と吸血奇術師♂～ｳﾞｧﾙｺﾞﾄﾏｼﾞｶﾙｳﾞｧﾝﾊﾟｲｱ～

「これがいわゆる、僕達のカードマジック、『怪盗クイーンを追え！』だけれど、ヴァンパイアの奴が、このマジックを参考にしたとすれば恐らく、こういう結論じゃないかと思うんだけれど…」

「それは？」

「今回の計画で使用される、恵さんに自分の描く絵画『金色の天使』を壊させる道具がマジックナイフであっても、あの二人が用意しているマジックナイフではない！

…意味は解るよね、ハルちゃん？」

「…そっか！私達のマジックをベースにしているのなら、確かに、そう。

『怪盗クイーンを追え！』のカードマジックが、見る人に不思議だと感じさせる最大の点は、トランプの山の中心辺りに、確かに二枚重ねにされて差し込まれたはずの、ダイヤとハートのＫとＪのカードの間に、ハートのＱがいつの間にか挟まれている点。

しかし、実はそれはトリックのなせる技で、二つの騙しがそこに存在している。

一つは、初めから、トランプのやまの一番上と下に、順不同でダイヤとハートのＫとＪがあり、やまを二つに分けて下半分のやまを上半分の山に乗せれば当然、その上半分のやまの一番上に置いたハートのＱは必ず挟まれるという点。

そしてもう一つ…こちらが本命の騙しだけれども、トランプのやまの中心辺りに差し込んだ二枚のダイヤとハートのＫとＪ、そしてそのやまの一番上と一番下にあるダイヤとハートのＫとＪは、全然別物である点。

しかし、それが見る側からすれば、一見それら二組のＫとＪがイコールに見えてしまう為に不思議に思ってしまう…」

「…そう、そしてそれは実は、初めのかけ声、『ここに、ダイヤとハートのＫとＪがあります』と言う所からすでに、そのトリックが始まっていた。