♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「ど、どういう事よ!」

突然現れたヴァンパイア礼士に、荒々しくかみついた春子。

そんな春子に対して、ヴァンパイア礼士は、おちゃらけた表情で答えた。

「…その前に、喉渇いちゃったなあ~僕。

トマトジュース、無いかい?乙女座。

…無ければ、お前でも良いぜ…

…って、早いな、今回は。」

「あ、当たり前でしょ?

いつもいつも、簡単に私の体に気安く触れられてたまるもんか!」

そう言って春子は、顔を真っ赤にして怒りだした。

その様子を受けて、ニヤニヤしながらヴァンパイア礼士は、紙パックのトマトジュースを、ストローでチューチューやりだした。

「うん、温くても、トマトジュースはうまいな!

…でさあ、乙女座。それを雪野恵に今伝えに行った所で、どうなるの?」

「ど、どうなるのって…

今持っているナイフが、すでにあんたが別ルートで用意したマジックナイフにすり替わってないかを確認して…」

「その時点で、その確認が無駄だっての。

一つ忘れてないか?

もしそうだとしたら、もうすでに解決してるはず。

だって、お前ら自身が雪野恵に、自分の果物ナイフを肌身離さず持っていてくれって言ったんだろ?

…あっ、でも、その時そのナイフを手にとって確かめた訳じゃないから、そう言ってるのか。

そうだったな。ああ、悪かった、悪かった。

じゃあ、どうぞどうぞ、雪野恵の果物ナイフをたんとお確かめくださいませ。

そしてそれが、マジックナイフで無い事をお確かめあれ。」

「じゃ、じゃあアンタはこう言いたい訳?

小谷静と京子が準備したマジックナイフとは別の、マジックナイフが恵さんの手元に用意されてはいないと…」

春子はじっと、ヴァンパイア礼士の瞳を見つめながら言った。

その春子の眼差しに対して、ヴァンパイア礼士は、飲み終えたトマトジュースの紙パックをクシュッと握りつぶすと、静かに答えた。
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