♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
春子がそう答えると、太田部長は、フンッ、と、鼻息を鳴らして言った。

「雪野恵さんよ。あなた達が、学園祭の催しで使うために、備品を借りに来た次の日、雪野さんがウチに来て、借りてったのよ。

…マジックナイフを!」

「えっ?恵さんが?何故なの!?」

-だが、そんな過程を踏んだとしても結局、よほどの事が無い限り、雪野恵の絵画を台無しにするのは、やっぱりマジックナイフだろうよ-

春子は、はっとして、ヴァンパイア礼士が、春子と礼士の二人に突きつけた挑戦状を急いで取り出し、何度も読み返した。

-小谷静は、復讐したい相手、雪野恵の描いている絵画作品、『金色(こんじき)の天使』の破滅を望んでいる。

だが、小谷静は、美術部に所属しない部外者である為、その作品には近づけない。

しかし、そんな小谷静に、幸運にもわざわざ共犯者を買って出てくれるものが現れた。しかもその人物は、美術部員…

…ある道具が用いられて、二人の実行者達の思いが交錯する中、『金色の天使』は無惨な姿へと変えられてしまう事になる-

「…恵さんは、最終的に自分の絵画を壊させられる羽目になる。

壊させられるのは、恵さん。

壊す、実行するのは、恵さ…

あっ!」

「ど、どうしたの、ハルちゃん!

突然、大きな声出して!」

「この文章、おかしな書き方している!

一見、ひとつながりの文章に見えるけれど、実は、違う!

…途中で、すり替わっている!」

「な、何が?」

礼士が、不思議そうに春子に尋ねた。

それを受けて春子は、ひどく興奮しながら、礼士に言った。
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