♀乙女座と吸血奇術師♂～ｳﾞｧﾙｺﾞﾄﾏｼﾞｶﾙｳﾞｧﾝﾊﾟｲｱ～

「い、いいですか、礼士先輩？

こ、この文章は、先程も言いました様に、二つの文章で成り立っているんです。

－小谷静は、復讐したい相手、雪野恵の描いている絵画作品、『金色（こんじき）の天使』の破滅を望んでいる。

だが、小谷静は、美術部に所属しない部外者である為、その作品には近づけない。

しかし、そんな小谷静に、幸運にもわざわざ共犯者を買って出てくれるものが現れた。しかもその人物は、美術部員…

…ある道具が用いられて、二人の実行者達の思いが交錯する中、『金色の天使』は無惨な姿へと変えられてしまう事になる－

礼士先輩？もし、この文章を二つに分けるとしたら、どこで分けます？」

「まあ、そりゃあ分かりやすく、『…』で区切られている部分かな？」

「そ、そうです！

じゃあ、私達のトランプマジック、『怪盗クイーンを追え！』の様に、一見同じ様に見えて、実は全く別と考えられそうな部分って、どこだと思います？」

「う～ん、どこだろう…




…うん、あれ？もしかして、これの事？

二つに分けた上部分の文章には、『共犯者』と書かれてあるけれど、下部分の文章には、『実行者』と書かれてある。

でも、これが何か？」

「更にその下部分には、こう書かれています。『二人の実行者達の思いが交錯する中…』と。

共犯ともなる相手の心と自分の心のつながりのたとえとして、『交錯』なんて言葉、普通おかしいと思いませんか？

だって、ここで言う共犯者って、小谷静と京子さんでしょ？あの二人の心は、一つになっているはずだから、交錯する事は無い。

…上部分の共犯者達は、目的も、心も一致しているのに、下部分の実行者達は、目的は同じでも、考えている事が、全く別…」

「…そ、それって一体、どういう事？」

その礼士の質問に、突然春子は返答の代わりに、礼士の腕をとって、第二美術室に駆け出した。