♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
学校の美術の課題、気晴らしの意味もあって、近くの海が見える公園で、私を心配する母親に付き添われながら、事件後初めて、キャンバスを前に筆をとっていた。
まだその頃は、首のあざを隠す為に、首に包帯をまいていたわ。
そして、そんな私を待っていたのは、残酷な現実だった…
赤い絵の具が、使えない!
使おうとすると、体が震え…絵が描けない!
最も大好きで、得意としていた私の赤が、使えない…」
そこまで言うと、恵は顔を覆い、椅子に腰掛けたまま、しばらくの間、さめざめと泣いた。
そして、ある程度落ち着いた後で、春子が差し出したハンカチで涙を拭うと、再び語り出した-
「恵っ!
どうしたの!筆を急に折ったりなんかして!」
「構わないで!お母さん!
赤が使えないんじゃ、私は絵を描いている意味が無い!
赤が無いと、私の絵は、完成しないのよ!
あの大空を羽ばたきたいのに、羽をもがれ、それが叶わない鳥と同じ!
…大好きな絵を、自由に描く羽が無いなら、こんな筆、あっても…」
「だから、最後に残された、自分の脚までたたき折るつもり?
羽がないのも哀れだけれど、羽があっても、脚が無く、立つ事も出来ずに地面にはいつくばってもがいている鳥も、中々惨めなものよ!」
「小谷さん…って言うの。そう、あなたは腕が不自由で…
あっ、お母さんは、少し離れていて。
二人きりにさせて。」
「…精神的な物らしくって。
母子家庭だった私は、こないだ、大好きだった母親を、闘病生活の末に亡くして…
心にこう、ポカーンと大きな穴が空いちゃってさあ。
一番私の事を、私の絵を理解してくれていた母親を亡くして初めて気付いたの。
ああ、私は、母親に喜んでもらいたくて、絵を描いていたんだって。
…目標が消えちゃった途端、私の腕…いいえ、あなたに合わせるなら、脚、死んじゃった…」
「ねえ、恵さん。赤があなたの生きる希望なら、私、あなたに羽をあげる。
見てて。このナイフでここをこう手直しすると…
赤とは別の、鮮明さが出るでしょ?」
まだその頃は、首のあざを隠す為に、首に包帯をまいていたわ。
そして、そんな私を待っていたのは、残酷な現実だった…
赤い絵の具が、使えない!
使おうとすると、体が震え…絵が描けない!
最も大好きで、得意としていた私の赤が、使えない…」
そこまで言うと、恵は顔を覆い、椅子に腰掛けたまま、しばらくの間、さめざめと泣いた。
そして、ある程度落ち着いた後で、春子が差し出したハンカチで涙を拭うと、再び語り出した-
「恵っ!
どうしたの!筆を急に折ったりなんかして!」
「構わないで!お母さん!
赤が使えないんじゃ、私は絵を描いている意味が無い!
赤が無いと、私の絵は、完成しないのよ!
あの大空を羽ばたきたいのに、羽をもがれ、それが叶わない鳥と同じ!
…大好きな絵を、自由に描く羽が無いなら、こんな筆、あっても…」
「だから、最後に残された、自分の脚までたたき折るつもり?
羽がないのも哀れだけれど、羽があっても、脚が無く、立つ事も出来ずに地面にはいつくばってもがいている鳥も、中々惨めなものよ!」
「小谷さん…って言うの。そう、あなたは腕が不自由で…
あっ、お母さんは、少し離れていて。
二人きりにさせて。」
「…精神的な物らしくって。
母子家庭だった私は、こないだ、大好きだった母親を、闘病生活の末に亡くして…
心にこう、ポカーンと大きな穴が空いちゃってさあ。
一番私の事を、私の絵を理解してくれていた母親を亡くして初めて気付いたの。
ああ、私は、母親に喜んでもらいたくて、絵を描いていたんだって。
…目標が消えちゃった途端、私の腕…いいえ、あなたに合わせるなら、脚、死んじゃった…」
「ねえ、恵さん。赤があなたの生きる希望なら、私、あなたに羽をあげる。
見てて。このナイフでここをこう手直しすると…
赤とは別の、鮮明さが出るでしょ?」