♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「ねえ、小谷さん…もしかして私達、もう一度あの空に、羽ばたく事が出来るんじゃないかな。

…あなたは、脚が無いかも知れないけれど、羽は、ある。

私は、羽がないけれど、脚は、ある!」

「…そうね。お互いの足りない部分を補い合えば、もしかしたら、もう一度、あの空に…」




「…それにしても、良かったわ。恵が、しっかり者の静ちゃんと一緒の高校に通う事が出来て。

しかも、二人の作品がいきなり、春風展の最優秀賞である夢桜賞に選ばれるなんて、すごいじゃない!

これからも、恵の事よろしくお願いしますね。」

「そんな、おばさま。

めぐには、私の方こそいつも優しく接してもらって。

母が亡くなって以来、こんなに心穏やかでいられる日々が過ごせるのは、めぐのおかげです。」

「私も、静ねえに、いつも見守られているみたいで、安心していられるの。」

「この子ったら。

恵はね、いつも言うんです。同い年だけれど、まるであなたが自分のお姉さんみたいだって。

少し甘えん坊な子で、手が焼けるけれど、これからも仲良くしてあげてね。」

「はい!そして今度の絵画展も、この妹と一緒に全力を尽くしたいと思っています。

今後も、よろしくね、めぐ。」

「よろしく、静ねえ。

あははっ!」




「…ごめん!今度の第22回全高展は、私は一緒に最後まで作品に関われそうに無いよ。

…悔しいよ。急性胃腸炎だって。

この腕も、最近また調子悪いみたいだし…

ごめん、めぐ!」

「安心して休んでいて、静ねえ!

静ねえからもらった、第22回全高展の会場の見取り図。

私達の作品の展示場所、そしてその場所の照明の種類、照らされる角度。

多少の誤差はあっても対処できる様な、静ねえ直伝の削りで、今回も、最優秀賞狙いでいくから!」

「任せたよ、めぐ!」

「任せて、静ねえ!」




「…どういう事、めぐ!

…何で、私の名前が載せられて無い…」

「広報誌の担当にも、何度も言ったんだけれど、聞いてもらえなかったのよ!

もう今更、変更なんて出来ませんって。」

「…」

「し、静ねえ?」

「きょ、今日は一人で帰らせて。

わ、解ってるわ、あんたが悪い訳じゃ無い事ぐらい…」




「…あっ!静ねえ、大丈夫?」
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