♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「フフフ…もう遅い!後、数センチで、乙女座の唇を奪え…



…痛ってー!

な、何も全力ビンタする事ねーだろよ、乙女座!」

「するわっ!でも、何でアンタがまた現れたのよ!

良い、雰囲気だったのに…」

「良い雰囲気ねえ…

まあ、いいや。また、事件の匂いがしやがったからさあ。また出てきちまった、俺様。

ついでに、俺様もまだ手をつけてない、お前の唇でも奪っておこうかと…」

「ついでで奪うな、乙女の初キッスを!

私の唇にふれて良いのは、世界でただ一人…」

「…礼士様、だろ?
俺様に奪われれば、同じ事じゃねえか。

…それにずっと言わなかったが、俺様は、お前の事が好きだからよ。」

「あ、アンタに好かれても仕方がない…!?」

春子は、そこまで言うと、ハッとした。

-ヴァンパイア礼士と礼士先輩は、極論、同じ。

と、言う事は?-

その春子の表情を見たヴァンパイア礼士は、クスッと笑うと、春子に言った。

「…そう、『コイツ』はずっと、お前の事が好きだったんだぜ?

…奥手野郎だから、そんなそぶりお前に見せなかったが。

あ~あ、でも、悔しいよなあ。」

「く、悔しい?」

「だってよ、お前の事好きだってアピる俺様より、自分の気持ち伝える事も出来ない礼士君の方に、お前の気持ち、向いちゃってるもんなあ。

…そうだ、決めたぜ、俺様っ!」

「?」

「このままダラダラしていたら、いつかきっと俺様の意識が礼士の意識を乗っ取っちゃうかもしれねえ。

解るんだ。段々、礼士よりも俺様の意識の方が強くなりつつあるのが。

だが、それじゃあ少しも面白くない。

そこで乙女座!」

ヴァンパイア礼士は、そこまで言うと、クルリと春子に背を向け、空に輝きだした月を見上げた。

ヴァンパイア礼士は、言った。
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