♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
所で、この松永春子と安宮礼士は、元々家がお隣さんで、年は礼士が一つ上の幼なじみだった。

そういう訳で、小学校の時は、春子が三年生、礼士が四年生の時まで一緒に学校に通っていたのだが、礼士の父親の仕事の都合で礼士が引っ越す事となり、それ以来疎遠になっていた。

だが、春子が高校に進学した時、偶然礼士を見かけて一気に、仲良かったあの頃の事を思い出し、二人で幼い頃趣味だった奇術の同好会を作る事になった。

そして一緒にいる内に、幼い頃に薄々気付いていた、礼士に対する憧れの気持ちが大きくなっていき、その結果が…

「ここ、どう塗ったら紅葉の華やかさが際だつと思います?

ね~え、先輩?」

「だっ、だからハルちゃん、も~ちょっと離れて描かない?

あっ、だからそんなによられたら…

ああっ!」

「きゃあっ!


…ご、ごめんなさい、礼士先輩。でも、しばらくこのままでも良いかも♪」

礼士を押し倒す様な形になった春子。

この様に、彼女の愛情表現が時に暴走する事がしばしばあった。

「あれ?筆、僕の筆は?

ああっ、もう!ハルちゃんが急に倒れ込んでくるから、筆がどこかに飛んでっちゃったじゃないか。」

「あ~ん、ご、ゴメンナサ~イ。

私も探しますぅ…」

「…これの事?もうすぐで、私のスカートが絵の具で汚れちゃう所だったわよ!」

「えっ!?」

二人が声のした方向を振り向くと、一人の少女が、礼士の筆を持ってしかめっ面をして立っていた。
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