♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
少し茶色がかった色の髪は、染めたと言うよりは、恐らく地毛の色であろうか。

それを後ろにポニーテールで結び、眉は細めにキリッと描かれ、細い目。

すらっとした顔のラインが、意志の強さを感じさせる。

正統派美人と言った感じのその彼女が、春子と礼士をしかめっ面でにらんでる様子は、見る者にそのキツそうな性格を印象づける。

その少女が、激しく右手を震わせているのを見て礼士は、慌てて春子を引き離し素早く立ち上がった。

「す、すみません。どこも汚れて…」

「だから、汚れそうになったって言ってるじゃない!

汚された、なんていつ言ったかしら?

どこもかしこも騒がしいから、少し静かな場所はないものかと歩き回っていたら、バカップルの馬鹿騒ぎに混ざって、筆が飛んでくる始末。

どこもかしこも、馬鹿ばっかりで、始末に負えない!

一応、授業中よ、本当。

何で真面目に絵もろくに描こうとしない馬鹿…」

「さっきから、馬鹿、馬鹿って、馬鹿って言う方が、馬鹿なんですうっ!


悪かったって、謝ってるじゃないアンタ!

…じゃあ、アンタはどんだけ真面目に絵を描いているのか、どれだけすごい絵を描いているのか見せてもらいたい…」

その少女の言いぐさにイラッときた春子は、勢い良く立ち上がり、その少女に食ってかかろうとしたが、すかさずその少女が、持っていた絵の描かれていたボードを春子の目の前に突き出すと、春子はたちまち硬直して沈黙してしまった。

-…う、上手い…-

「でしょ?当たり前よ!

絵に対する精進の仕方が違うのよ!

そんじょそこらの上手い上手いなんて言われてる奴らとは…



…勿論、アイツなんかよりも、はるかに、ね。」

その少女は、春子とやりとりする最中で、あるものに気がいったらしく、その方向に目をやった。
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