元姫と現姫ー嘘に塗れた真実ー




自問自答を繰り返す。


違う、違うよ。

誰も悪くないんだ。


要はタイミング。

タイミングが悪かった。

そう、全てタイミングのせい。



僕が、数分後に来ていれば。
あの子が、遅刻していなければ。

今ここにはなかった未来があったのかもしれない。



これは偶然?それとも…



(必然、かもね。)





また、頭の中で声が聞こえたような気がした。


すると唐突に、彼女の声がする。



「ど、して………、ここに…っ」




そっと耳を澄ますと聞こえてきた声。ホントに小さな小さな、声。


どうしてここにいるの?彼女はそう聞きたいんだろう。



そんなの…



「……………、久しぶり、だね。」




ホントの理由(ワケ)を、言えるはずないじゃないか。


だから僕は誤魔化す。

いつものように、薄っぺらい笑みを張り付けて。

笑いたくもないのに、無理矢理口角を上げて。


ああ、僕はまた、嘘を繰り返す。


_本音をその笑顔に隠して。



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